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苔の研究レポート

027 京都 泉涌寺妙応殿 仙山庭

 5月14日、京都市東山区の泉涌寺妙応殿の仙山庭でウマスギゴケの修繕を行いました。
 この庭園は重森三玲の作庭と言われ、石と苔と砂の独特な景観をもっています。近年、そのウマスギゴケが衰退して、見るに堪えない、ということから、苔の修繕工事を実施しました。
 
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  施工前の苔の衰退状況
 
 4月28日に事前調査を行い、苔がウマスギゴケであること、基盤の土が排水性の高い山砂であること、光量は十分にあること、潅水量が少ないこと、ウマスギゴケは野筋の天頂部の部分の傷みが激しいこと、一部、地衣類が侵入して繁殖していること、などを把握しました。
 
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  傷んだ部分を除去して苗を移植
 
 修繕面積は約7平方メートル、㈱嵐北商事で栽培されたウマスギゴケの苗を50ケース使用しました。施工は苔神の指導の下で、松寿園の重泉保会員(画像参照)が行いました。
 ウマスギゴケの庭園での育成で重要なのは、仮根です。ウマスギゴケは土中の仮根から、毎年、新株を発生させます。この新株が発生することで、世代交代とコロニー形成が自然に行われるようになります。従って、ウマスギゴケを移植する時には、まず、十分に育成された仮根を持つ苗を選びます。㈱嵐北商事は土田一義会員の指導の下で3年前からウマスギゴケの栽培を始めて、今年から、出荷できるようになりました。
 また、移植作業で注意しなければならないのは、庭園の基盤土の保水性と排水性がウマスギゴケの育成に合っていなければなりません。泉涌寺の現場は排水性が高く、特に野筋の天頂部は保水性が極端に低くなっていることから、基盤土の保水性を高める改良を行いました。
 
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  施工完了の仙山庭
 
 施工は、午前8時から開始して、午後4時には終了。移植したウマスギゴケの管理として、しばらくの間はたっぷりと潅水して乾燥を防止すること、ウマスギゴケの茎高が15㎝ほどの高さになったら、倒伏防止のため刈り込みを行い、茎高を制御すること、などをアドバイスして来ました。
 しっかりと管理すれば、ウマスギゴケは定着し、繁殖してくれます。
                                  by 苔神