苔の専門サイト 日本苔技術協会 > 研究レポート > 003 水分過多のこけ玉

苔の研究レポート

003 水分過多のこけ玉

 店頭で売られているこけ玉は、店頭に並べられてから1か月程度までは緑色のきれいなこけ玉です。注意深く観察すると、いつも水分を含んでしっとりと濡れています。
 コケは水分を含むととてもきれいに葉を広げます。乾燥していると葉が縮まってちりちりした感じになり、あまりきれいには見えません。商品としてきれいなコケを見せたい気持ちで、毎日せっせと水をあげるのです。
 店頭での照度はおよそ1000ルックス程度です。このくらいの照度で毎日せっせと水を上げると、水分過多のこけ玉になってしまいます。
下の写真はあるお店のこけ玉をこっそりと撮影しました。(お店の人、ごめんなさい)
 
03%20kokedama1.jpg
 
 このこけ玉はあきらかに水分過多になっています。触るとコケ(ハイゴケ)の部分がヌルヌルし始めています。このままだと、10日程も経つと全体的に黒くなってコケが死んでしまうことでしょう。
 このお店の方はコケの扱い方(育て方)を知らないのだと思います。
 コケは水の中に浸けたままでも2~3週間は生きています。が、そのままの状態が長く続くとやがて死んでしまいます。長く持っても1~2か月です。
 しかし、乾燥状態に置くと4~5か月は生き続けます。コケは乾燥すると葉を縮めて仮死状態になって生命を維持します。その後、水をやれば再び成長を始めます。
 水分過多の状態で、何故、コケが駄目になるのか、そのメカニズムは不明ですが、考えられるのは、呼吸困難、浸透圧による細胞破壊、雑菌の繁殖による腐敗などです。このあたりの研究が進むといいのですが。
 経験と観察によれば、コケは湿潤と乾燥が適度に繰り返されることで、健全な成長をすると言えます。もちろん、コケの種類によって水分の量や光りの量は異なります。ハイゴケはかなり明るい光量の環境を好む種類です。
  By 苔神