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苔の研究レポート

002 苔の質問と応答(継続)

■質問:富山県 T 11/11/08
 お世話になります。丁寧な回答、本当にありがとうございました。大変参考になりました。今までコケについて、簡単に考えていましたが、生態がまだ明らかになっていないことを聞き、とても奥が深いものだと感じました。

 アドバイスを受け、スギゴケの様子を調べてみました。その写真を添付します。
 新株は多少あるようですが、仮根層はやはり発達していないと思われます。写真のスギゴケは、現場からとってきたものですが、栽培土は2~3㎝で、基盤土は山砂で簡単にはがれました。
 今後の対策として、このような状態で追い播きをして新株が発生する可能性はあるでしょうか?
 それより、コケを一度はがして、基盤の土づくりをやり直した方がよいでしょうか?
アドバイスいただけると大変ありがたいです。よろしくお願いいたします。
 
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■応答
 現場のスギゴケの速やかな調査、観察写真の的確な撮影、ともに勘どころを得たもので、感心致しました。
 スギゴケのコロニーが、基盤土から簡単に剥がれて来たことや、培土の厚み、仮根層の薄さ、新株の芽数(17株)などがつぶさに観察できます。種類はオオスギゴケのように見えます。株齢は3~4年と思われます。
 培土は黒土か、畑土でしょうか。ひょっとすると、ケース栽培されたものではなく、畑で栽培された苗を鋤取った苗かも知れません。畑で栽培すると、スギゴケの仮根は5センチ以上の深さまで発達しますが、それを切り取って出荷するために、仮根の大半が失われてしまいます。その代り、畑では、翌年、新株が旺盛に発芽して再生産に繋がります。スギゴケについて知っている栽培業者はほとんどいない、それが現状なのです。

 さて、現場の問題ですが、本来、事業としてコケを扱う場合は、アドバイスや指導は有料になるのですが、飛世さんの熱心さに免じて、お教え致します。
①現在のスギゴケを剥がして基盤土の山砂を10センチほど掘り出します。
②底に、薄いビニール(袋を開いたもので可)を敷き込みます。(現場が非常に排水性の良い基盤のように見えますのでこの対策を採用します)
③バークまたはピートモス、赤玉土を1対1で混ぜ合わせた混合培土を元の基盤土の高さまで投入します。
④たっぷりと灌水し、培土に給水します。
⑤スギゴケの種を均一に播き、さらに灌水します。
⑥少し水が引いた頃に、剥がしたスギゴケを元に戻します。
※スギゴケの種は1平方メートル当たり5リットルの播種量を目安にします。

 施工後の管理ですが、これから春までの冬期間は以下のようにします。
 現場は当然、雨が当たる場所と思いますが、もし、雨が当たりにくい場所なら1週間に一回程度の灌水を考慮してください。もちろん、その間、雨が降らないという条件の時です。1週間に一回程度、雨が降るような場合は灌水は必要ありません。また、風が通る場所で乾燥が早いようなら、時々、灌水してください。冬期間、雪の下になるなら管理は必要ありません。
 春、3月頃から、新株の発生状況を観察します。新株が旧株と同じくらいの数が発生すれば、まずまずです。6月頃まで、時々でよいですから、観察を続けます。新株は春先から、夏場まで、地中から伸び出して来ます。
 取り敢えず、こんな対処法が最善かと考えます。

 本格的にコケを学ぶには、コケを栽培してみることが一番です。コケを学びたくなったら、連絡して下さい。 今後、コケは様々な形で需要が増えて来ます。今、コケを学んでおけば、将来、大きな事業に取り組むことが出来ますよ。
 頑張って下さい。
 by苔神